今回のブログでは、ある金融サービスの口座開設から初期設定・初期稼働までの流れを、日記調査とインタビューを掛け合わせた複合調査で実施した際の流れをご紹介させていただきます。

実施の背景とこれまでの調査の問題点

金融サービスの口座開設から初期設定などの課題抽出を目的としたユーザーリサーチを行う際、実際に口座開設してもらうことができないため、いろいろと悩みながら調査を行ってきました。

届くメール、郵送物、本人確認のフローといった部分については、サンプルや擬似的な環境を用意して、そちらをしかるべきタイミングで見てもらうかたちで実施していました。

しかし、個人情報の入力の部分やPW設定・入力、認証の部分は、疑似的なものだと被験者もリアルな体験として捉えにくく、また、初期設定や初期稼働までの時間の経過の部分についても非常に擬似的なものとなってしまい、良いリサーチになっていないように感じていました(準備や段取りに非常に手間がかかるにも関わらず)。

ある金融サービスの口座開設フローの改修プロジェクトを担当するにあたり、上記のような課題を解消すべくリアルな調査を実施しました。

実施した内容

実際に実施した内容ですが、まず被験者については、調査対象の金融サービスを現在は利用していないが今後利用したい、と回答した方に参加してもらい、口座開設から初期設定・初期稼働までを実際に行ってもらいリサーチしました。リサーチ手法はZoomでの行動観察とインタビューとなります。

以下の流れで行いました。

1.口座開設の入力と本人確認までを行動観察しながら適宜インタビューを挟むかたちで行いました。

2.口座開設が完了した後の初期設定については、別日で行いましたが、こちらも1.と同様のやり方で行いました。

3.口座開設申し込み後に届いた郵送物やメールの検証は、郵送物やメールを開いた際の印象や内容を見て認識したことをメモしておいてもらい、後日行う初期稼働のインタビューの際に一緒に話を伺いました。

4.入金などの初期稼働については、各自、好きなタイミングで行っていただき、自身が行った行動の記録や気持ちの移り変わりをメモしておいてもらい、後日インタビューにて深堀りするかたちで行いました。

なお、調査するデバイスについてはPCとSPどちらの体験もうまく拾えるように、一部、指定させていただきました。

実施してみて感じたこと

実施してみて感じたことは、やはり、実際に自分が利用するものを本当に申し込む体験ということで、実際に届くメールや郵送物、時間の経過なども含む、流れ全体から見た細かな問題が発見しやすい、ということです。
こうした調査においては個々の利用文脈やその時々の状況から考えることが非常に重要だと感じていましたが、今回調査をしてみてそのことを改めて強く感じました。

具体的なところでは以下のようなところが特に良かったと感じました。

・全体の流れ、利用文脈の流れの中でのユーザーの動きが見えた
・時間的な経過から発生し得る問題点が見えた
・IDPW関連、認証部分で起きている細かなストレスの部分がいろいろと見えた
・届いたメールやメッセージ、郵送物の問題点を発見しやすかった
・不備発生につながりそうな点が見えた
・タスクの順番や目にするものの順番が絡む問題点を発見できた
・口座開設後、非稼働に繋がりそうなポイントが見えた

また、これはインタビュー自体のことですが、インタビュー中の段取りを気にする負担が大幅に減ったので調査に集中できたことも大きかったです。

これまでのリサーチでも、少し過去のことから現在までの流れの部分もインタビューするようにしていましたが、やはり1人の人間の行動を継続的に見ていくことは非常に有意義だと感じました。

そういった意味では、特に金融サービスは、その人のライフステージ・状況でものの見え方も変わりますし、顧客の成長を促すという観点で、1人の人を長いスパンで継続的にリサーチしていくような調査もやってみたいと思いました。