WORKS

ネット金融サービスのUX向上活動支援プロジェクト

UXリサーチ, 調査・分析

ネット金融サービスのUXデザインプロジェクトにおいて、UXリサーチを中心とした継続的な各種調査・分析業務を担当しています。

CLIENT:
金融サービス会社様
DATE:
2018 -

OUTLINE

UX向上活動の一環として、顧客やユーザーのサイト内体験の向上を目的とした、UX評価、検証活動、及び各種分析結果をもとにした課題抽出・施策立案業務を担当しています。

ROLE

  • UXリサーチの企画・設計・実施
  • エキスパートレビュー/競合他社調査
  • 改善施策立案

ユーザーの本質的なニーズを捉え、継続的なUX向上を目指す

ネット金融サービスのUX向上活動の一環として、顧客やユーザーのサイト内体験の向上を目的とした、UX評価、検証活動を行いたいとのご相談をいただき、プロジェクトがスタートしました。

ユーザーの本質的なニーズや、サービス全体の大きな方向性も含めて捉えたいというご要望でしたが、社内でも初の試みということで、調査手法・実施方法、定着化の部分も含めて支援させていただきました。

リサーチの手法

質的調査による発見・探索の調査と、仮説検証型の調査を組み合わせたかたち、具体的には以下の2つの調査を組み合わせて実施しています。

  1. 1.ユーザーの価値観や日頃の使い方、利用文脈を知る
  2. 2.事前の仮説や確かめたいことを検証・確認する

商品・サービスをとりまくユーザーの行動や発言からユーザーの利用文脈を知るとともに、事前にある仮説を検証・確認することで、ユーザーにとってのサービスの改善・向上に役立てるものです。

調査手法についての詳しくは以下となります。

1.ユーザーの価値観や日頃の使い方、利用文脈を知る

コンテキスチュアル・インクワイアリーによる行動観察とインタビューを交互に行う手法で行います。

自然な利用文脈(コンテキスト)を重視し、実際のユーザーのモチベーションに沿ったかたちでWebサイトを利用してもらいます。
行動の背景や理由を知りたい箇所については、オープンな質問(会話)を重ね、行動の意味合いを探リます。

逆に、発言したことを実際の行動に移してもらう、といったことも行いますが、このことで、発言(考え)と行動がどう紐づくのかを確認することができます。

2.事前の仮説や確かめたいことを検証・確認する

事前の調査活動により上がっている仮説の検証や確認も行います。
仮説の検証についても、できるだけユーザーのモチベーションや文脈に沿ったかたちで利用してもらった上で探ります。

また、サービスの認知や興味関心の部分を検証する際は、自然な文脈で目に触れた際に興味を持ち得るか、申し込みや購入に進んだ際の体験はどうか、といった観点で探ります。
もし、調査対象サービス・商品に対し、利用したい気持ちが沸かない場合も無理に誘導せず自分の感情に忠実に行動してもらった上で、ボトルネックとなっている部分や態度が変わるきっかけがないか、適度に情報を与えたり、軽めに誘導しながら探ります。

プロセス

調査視点に厚みと深みを持たせ、検証活動の精度を上げられるよう以下のようなかたちで実施しています。

1.状況把握・仮説出し

リサーチ時のポイントになる部分のあたりをつける

まずは、エキスパートレビューから行なっていきます。エキスパートレビューの主な目的は、ユーザービリティ上の課題を抽出することではなく、サイトの状況を細かく把握することや仮説発見です。
また、2,3名の簡易な30分程度のUXリサーチを行い、大まかなユーザーの行動を捉えます。
その上で、さらにウォークスルー調査を行い、ユーザー視点でサイトを利用してみてリサーチ時のポイントになりそうな箇所のあたりを付けていきます。
リサーチ時に競合サービスを利用してもらう場合もあるため、競合サービスについても同様のことを行います。

ビジネス戦略、課題感の把握

サービス・商品担当からビジネスの戦略や方向性や課題感などをヒアリングし、把握しておきます。
これらを把握しておく目的は、ユーザーの行動を観察する際に、ビジネスの方向性がどういった価値を持ち得るのか、もしくはギャップがあるのかを探るためです。
ビジネス側のやりたいことや課題の解決方法をユーザーに質問するためではありません。

これらをふまえて、リサーチの設計に入っていきます。

2.誰から何をどう探るかを設計

何を探りたいかを大まかに考えつつ、それを誰に聞くのもあわせて設計していき、そして実際のリサーチ時の流れを設計していきます。

何を探りたいかを検討する

調査対象サービス・商品について、以下を基本として探りたいことを検討していきます。

  • ・普段ユーザーはどう利用しているのか
  • ・ユーザーにとってどういう意味合い、価値を持つのか
  • ・興味や利用意向が沸いた場合、どう行動に移すのか
  • ・他調査で上がった仮説、社内で蓄積している仮説の確からしさ
  • ・事業提供側視点のサービスの方向性・あり方

上記の視点を基本として、調査テーマに沿ったかたちで設計していきます。
事業提供側視点も考慮しますが、サービス・商品の方向性がユーザーに受け入れられるかを確認する目的ではありません。サービス・商品とユーザーの現時点の関係を知り、サービスのあり方そのものを検討するためです。

誰から探るかを検討する

探りたいことを大まかに検討した上で、それらを誰から探るかを検討します。
文脈を重視したリサーチですので、誰の行動を見るか、誰の声を聞くかが、調査設計上非常に重要です。

その、誰、という部分についてですが、東京在住の40代主婦といったデモグラフィック的な属性のことではなく、調査対象サービス・商品に関して以下のような状況のユーザーになります。

調査テーマにあったかたちで、基本的には20名で行い4層程度に分けて行います。

  • ・未利用・興味ありユーザー
  • ・利用検討中のユーザー
  • ・利用中のユーザー(頻度、利用目的別)
  • ・休眠ユーザー
  • ・競合の同一サービス利用中ユーザー
  • ・競合からの乗り換えユーザー
  • ・関連・類似サービス利用中ユーザー

また、デバイスについてはPCとスマートフォンの両方でそれぞれ行いたいところですが、期間や費用の関係もあり20人の中で工夫して行なっています。
調査時は、基本的には両方のデバイスを用意しておき、できるだけ日常の利用シーンに近いかたちで実施しています。操作の調査が絡む箇所は、両方のデバイスで調査します。

テストの進行計画を立てる

限られた時間の中で、できるだけ有効なインサイトを得られるよう、大きな調査ポイントを各ユーザー層ごとに5個程度決めておきます。
詳細なシナリオや質問項目は用意しませんが、仮説検証・確認のパートもありますので大まかな質問内容は用意しておきます。

ただし、事前に準備した質問内容の通りに質問することはありません。あくまでも自然な会話の流れでうまく質問をして探ります。リサーチ中は、進行の部分に神経を使いますので、調査漏れがないようにという目的で用意するものです。

3.UXリサーチ実施

80分のテストとなりますが、リクルーティング時のアンケート結果をもとに会話を進めていきます。
家族構成、サービスを利用し始めたきっかけや、利用シーンや、日頃の行動について会話をしながら、できるだけ文脈に沿ったかたちで調査に入っていきます。

頭にあることや感情部分を少し口に出してもらいながら利用してもらいますが、気になる発言やつぶやき、態度があれば、タイミングを見て質問(会話)を重ねて深掘りしていきます。

逆に、ユーザーが発言した内容に沿って実際に行動してもらう、ということも行います。
発言内容と実際の行動にズレがある場合もあり、発言の奥に隠れていたものが明らかになる場合もあります。

また、サービス利用中ユーザーには、過去から現在に至るまでの状況を振り返っていただき、累積したUXを捉えることも行います。
例えば、そのサービスの利用を開始したきっかけや、始めるにあたってどう行動したか、つまづいた点はなかったか、つまづいた場合はどう突破したか、利用開始当初から今までで何か変化したことはあるか、といったことを探ります。

できるだけ自然なかたちで行動していただきますが、80分という短い時間の中で様々なことを探る必要があるため、適度に情報を与えたり、軽めに行動を促すなどして進めていきます。

なお、リサーチ実施時は、サービス・商品担当にも見学いただき、調査終了後には調査の振り返りを行います。また、調査は一度にまとめて行わず一日に2人程度ずつ行い、調査の仕方で改善すべき点があれば都度改善していきます。

4.モデリング、課題整理

全リサーチ終了後、調査結果についてのディスカッションを行なった上でユーザーの体験や気持ちを整理していきます。
まとめ方は調査のテーマごとに変わりますが、共通して作成するのは、代表的な行動の流れと心の声を整理した資料と、個別利用シーンごとの心の声と実際の動きを整理した資料となります。

その他、調査テーマに応じ、例えば以下のようなかたちで整理します。

  • ・サービスの興味喚起から申し込みまでの部分を探るというテーマであれば、ユーザーの行動と感情の流れをまとめ、そこにサイトの状況や課題となり得る点を追加していくかたちでまとめます。形式としてはジャーニーマップに近いものです。
  • ・サービス自体が目新しいもののため、認知・理解・共感がテーマになるのであれば、日頃の利用シーンの中で、どう出会い、どう興味を持ち得るのかをまとめます。
  • ・すでに周知されているサービスの利用促進がテーマであれば、どんな人にどんな体験を提供し得るのかと、どんな状況の人のメリットにつながり得るのかをまとめます。

これらの資料をもとに、今後のWebサイトのあり方、方向性を示し、長期的なサイト改善の方向性の指針とします。

多くの金融サービスサイトがそうですが、これまで提供側の考えや発想でものづくりをしてきましたので、ユーザーの本質的なニーズとのズレは少なからず発生しています。
また、ユーザーにとって良かれと思って作ったものがユーザーにとって良いものになっていない場合も多くあります。
本プロジェクトは、こうした状況に対して、ユーザー視点を的確に取り入れ中長期的に改善・向上に繋げていくことが目的です。

なお、仮説検証部分や明らかな課題と言える箇所については、事象、課題、対応の方向性、改修の難易度、改善効果、優先度を資料としてまとめ、随時改修を行なっています。