SHIMENAWA(しめなわ)は、商品に紐づく様々なデータを耐改ざん性の高いブロックチェーン基盤である「Corda(コルダ)」上に記録し、管理・共有することで、大切な商品の付加価値を最大化するサービスです。
2021年にプロトタイプをリリースし、既に政府系実証事業でお米やいちごを中国やシンガポールに輸出する取組みで採用されるなど、大きな実績を残しています。
ヒカリナではアプリのデザインやブランディング支援、サービスサイト構築なども担当させていただいています。
SHIMENAWAを運営するSBIトレーサビリティ株式会社代表の輪島さんに、SHIMENAWAというサービスに対する想いやこれからの展開について伺いました。
大塚:
SHIMENAWAが世の中に出始めましたが、現在はどういった状況でしょうか?
輪島さん:
まだプロトタイプでの実証実験の段階ではありますが、北海道のお米を上海ローソンさんに輸出する取り組みや、栃木のいちごをシンガポールに輸出する取り組みなどがひと段落したところです。
現在は酒類など新しい商材向けにブロックチェーン基盤の真価をより発揮できる仕組みづくりに着手し始めています。
大塚:
反応はいかがですか?
輪島さん:
上海ローソンさんの取り組みでは実際の消費者へのアンケート結果やPOSデータとの突き合わせで効果測定の分析が行われたり、またシンガポールの取り組みでは栃木県の自治体、生産者、海外現地のバイヤーさんなど、さまざまな人と話す機会があり、いろいろなことが見えてきています。
ひとつは、エビデンス付きの食の安全性や、他国産と比較して差別化できている点を求める声が非常に高いということが見えてきました。
特に上海やシンガポールなどの都市部はこうした合理的な思考を持った消費者が増えていると考えられ、単に「日本産」というだけでは選択せず、表記されている情報の信頼性、エビデンスが強く求められていることが分かりました。
この点はまさにSHIMENAWAが提供していくサービスですので、かなりフィットしているように感じます。
大塚:
日本国内でもそういった機運が高まっていることは感じますが、海外でもやはりそういった流れがあるのですね。
輪島さん:
そうですね。逆に日本よりもそういった意識が強いように感じました。
大塚:
まさにSHIMENAWAが求められているわけですね。
輪島さん:
単純に必要性という意味では非常に感じています。あとは実際に世の中にどう浸透させていくかだったり、導入する側のメリットを具体的に説明できるかといった部分になりますね。
大塚:
SHIMENAWAについてどう伝えていくかという部分ですね。
そもそもの話になりますがSHIMENAWAという名称をつけた背景についてあらためて教えていただけますか。
輪島さん:
SHIMENAWAという名称は神社などにあるしめ縄から来ています。
私たちの取り組みは最初、茨城のお米の取り組みから始まりまして、その時米作りについて調べていたんですが、昔の農耕民族にとって米の収穫は自然の恩恵、つまり「神」のご加護によるものであること、そしてその稲の茎の部分を乾燥させた藁にはその場所やものを清める意味合いもあるということを知りました。
そしてさらに、その藁を使って作ったしめ縄が不純なものが入らないようにするための境界であるということを知り、サービス内容とぴったりあうと思いSHIMENAWAとしました。
また、海外の人に対し日本をアピールしていく上でもベストな名称だと思っています。
大塚:
最初にSHIMENAWAという名前を伺ったときに、これは面白そうなプロジェクトだなと感じました。
その後プロジェクトに取り組む中でいろいろなお話を伺いましたが、サービスとして実現したいこととサービス名が非常にマッチしていてすごくしっくりきています。
お米の取り組みをしているときに思いついたというのは初めて伺いましたが、非常にいいストーリーですね。
服部:
僕もSHIMENAWAという言葉を最初に聞いたときにいろいろなインスピレーションがわきました。
アイデアが出しやすかったですし考えるのが楽しかったですね。
ロゴをデザインをしていく中で、伝統文化を背景としたネーミングの強さをシンプルに伝えること、アプリ以外のメディアでも印象を損なわない展開力、日本発のサービスとして和モダンのデザイン性を大切にすること、それらをいかに象徴化できるかをずっと考えていました。
コンセプトとしては大きくは2つで、SHIMENAWAのサービスを端的にイメージしたものと、SHIMENAWAが最終的に実現する持続可能な社会・最適な循環を表したものをデザインさせていただきました。最終的に決定したものは考え方としては後者の方のものでしたね。
輪島さん:
いろいろとお作りいただきましたよね。ありがとうございました。どのデザインもとてもワクワクしました。
どの案もそれぞれ良いところがあったのですが、決定した案は家紋のような見え方も狙ったというところが考え方として非常にしっくりきたんですよね。
家紋とは一族などを識別するためのいわばブランドだと思ったので、そのブランドを識別するためのもの、そのブランドの守り神みたいな感じがして、自分が考えていたSHIMENAWAというものがさらに強固になった感じがしたので決定させていただきました。
服部:
我々の想いとしてはSHIMENAWAにより不純なものが入り込むことを防ぎ、そのことにより良い世界の循環が生まれるといった方向性の中に、家紋というアイデアをトッピングして考えていったような案になりますが、今、お話を伺いながら考えてもしっくりきています。
大塚:
それと、このマークの使われ方も意識してデザインしましたよね。
SHIMENAWAは消費者がQRコードやICタグを読み取って利用するサービスなので、例えばQRコードを読み取る際の体験を考えたときに、信頼の証ということがより強く体感できるように品質マークのような見え方も想定してデザインしました。
輪島さん:
今、まさに消費者との接点となる部分のデザインが重要だと感じていることもあり、このデザインにして本当に良かったなと思っています。
大塚:
現在の課題やこれからの取り組みについてはいかがでしょうか?
輪島さん:
特に栃木のいちごの輸出実証を行った際に私自身も現地の生の声が聞けたのですが、そこで感じたことは日本の商品というだけではそこまで競争力があるわけではないということです。
海外の農産物も品質は上がっており、日本産というだけではそこまで価値を感じてもらえないのです。
ただ、実際に競争力がないのかと言えばそんなこともなく、例えば鬼怒川の清流、人が飲める品質の水で育ったいちごということを説明すると、そんなきれいな水で作られたいちごなら安全だなと、やはりそこには価値は感じてもらえるんですよね。
なのでそういったことをきちんと伝えていくところまで含めてSHIMENAWAなんだなと思いました。
大塚:
先日宿題をいただいた、消費者にいかにSHIMENAWAを使っていただくかという部分にも関わってきますね。
消費者にその商品の安全性はもとより商品のルーツやストーリーに興味を持ってもらったり、何か物を選択して購入しようとしているときに、その商品のルーツをチェックするような体験をどう作っていくかという。
輪島さん:
まさにそうですね。そういった体験をうまく作っていくことですね。
買い物をする際、スマホ決済が一般的になりましたが、それと同じように買い物をする際にスマホでその商品のルーツを正しく知った上で買う、みたいな体験をうまく作っていけないかなと思っています。
そしてその上で、日本の商品の価値を正しく伝えていきたいですし、SHIMENAWAでそれを支援していきたいと考えています。
服部:
産地偽装の防止や安全性の担保というだけでなく、そのものの価値を正しく届けるというところがSHIMENAWAの意義になるんですね。まさにブランドの守り神のようなツールですね。
輪島さん:
おっしゃる通りですね。
そのためにも、まずはSHIMENAWA自体の価値を伝えていかないといけません。
海外の人にとっては、日本古来のしめ縄というものに対してそもそもイメージがないわけですが、その日本的な部分に興味を持ってもらえると思っています。
SHIMENAWAのサービスサイトも作っていただきましたが、その部分をうまく作っていただきましたね。
阿形:
SHIMENAWAのサービスサイトはまずは日本語サイトということで、国内のtoB向けにサービス訴求をするためのサイトという役割を念頭に置いて、まずは端的にサービスを伝えるという部分をテーマにデザインしました。
ただ、全体の世界観みたいなものもうまく伝えていきたいと思ったので、SHIMENAWAの想いの部分も盛り込ませていただきました。
輪島さん:
サービス内容が端的に伝わりつつも、SHIMENAWAのサービスの世界感がビジュアルで伝わるように作っていただき、また、SHIMENAWAの世界観のコンテンツもうまく見せてくれていて、今の我々のフェーズに本当にぴったり合わせていただきました。
阿形:
海外向けのコンテンツは見ていただく経路やきっかけづくりとあわせて、何か別のものをつくっていきたいですね。実際に手にとってもらえるようなものなのか、SNSで拡散されるような何かなのか、あるいは店頭に置くようなものなのか分かりませんがそういった部分から考えていきたいですね。
そこを考えてから、動画だったりグラフィックのようなものを企画していけるといいですね。
輪島さん:
動画も良さそうですね。SHIMENAWAのサービス体験や、SHIMENAWAが実現する世界みたいなものを動画にするとか。
SHIMENAWA自体の価値を上げるというか、SHIMENAWAという新しい体験を作っていくことで商品のブランド価値向上につなげたいです。
これからの時代はなんでもそうですが、より個々のブランドとその確かさが重要になってくると思っているのでSHIMENAWAはそういった時代に必要不可欠なサービスだと思っています。
大塚:
本当にそうですね。価値の高いものがちゃんと評価され選ばれるようになるためのプラットフォームとなることで、世の中が良い方向に進むと良いなとあらためて感じました。
輪島さん:
そうですね。これから頑張ってやっていきたいと思います。
先ほどお話させていただいた、商品の選択や買い物の体験を新しく作っていくという部分を引き続きやっていきましょう。
大塚、服部、阿形:
そうですね。進めていきましょう。
本日はありがとうございました。