最近、海外の銀行アプリを調べていると、AIが家計の管理まで手伝ってくれるものが増えてきたなと感じます。日本だと家計管理は専用のアプリを別に入れて行う方が多いと思いますが、海外では銀行アプリ自体がその役割を担っているケースをよく見かけました。

そこで今回は、海外銀行の家計管理AI機能を8つ調べてみました。この記事では、下記の4つに分けて各サービスを紹介していこうと思います。

  • 会話で家計を分析してくれるAI
  • 自動で家計の変化を知らせてくれるAI
  • 自動で予算管理をしてくれるAI
  • 家計状況に合わせて自動で貯金をしてくれるAI

会話で家計を分析してくれるAI

ポイント

これまでは、明細やグラフを自分で見て「今月は使いすぎかな」と判断する必要がありました。こうしたAIは「先月の外食費はいくら?」と話しかけるだけで答えが返ってくるので、自分でデータを読み解く手間がかかりません。

Starling Bank | Spending Intelligence

Starling Bankはイギリス発のチャレンジャーバンクです。同行のSpending IntelligenceはGoogleのAI「Gemini」を活用した機能で、アプリ内のAIに質問を投げかけると、カテゴリや期間などの条件で絞り込まれた支出データがグラフとともに即座に返ってきます。
「先週スーパーでいくら使った?」「昨年1年間でいちばん多く使った加盟店は?」といった問いに対応しており、質問を重ねることで、自分ではなかなか気づけない支出のクセまで掘り下げて確認できます。

bunq | Finn

bunqはオランダ発のネオバンクです。同行のFinnは、アプリ内のサポートチャット画面から支出・予算・外部銀行口座を横断して照会できるAIです。
Starlingが自行の取引データのみを対象とするのに対し、Finnは他行口座まで含めてAIの分析範囲に入れており、「このお店で今年いくら使ったか」などを自行・他行の口座を合算して確認することができます。

自動で家計の変化を知らせてくれるAI

ポイント

AIが家計状況の変化を自動で検知して知らせてくれるため、家計管理をあまり意識していないユーザーにも有効な機能です。今回紹介する事例では、通知から支払い・予算調整・相談などの画面に遷移できるようになっており、アクションにつながるシームレスな体験になっています。

Bank of America | Erica

Bank of Americaはアメリカの大手商業銀行です。同行のEricaはバーチャル金融アシスタントで、2018年のローンチ以来、累計30億回以上利用されてきました。
サブスク料金の値上がりや、同じ支払いが二重に請求されていないかのチェック、この先7日間で残高がどう動きそうかの予測など、家計に関する30種類以上の気づきを知らせてくれます。通知を受け取った後は、その場で支払い・振替・専門家への相談チャットへと進めるようになっており、気づきからアクションまでアプリ内で完結します。

Huntington National Bank | Heads Up

Huntington National Bankはアメリカの地方銀行です。同行のHeads Upは、特にお金を使いすぎる前にこまめに知らせてくれるのが特徴です。
たとえば、予算のうち50%・75%・100%を使い切ったタイミングで通知が届いたり、過去の平均と比べて今月の支出が多い場合に通知が送られたりと、使いすぎに気づきやすくしてくれます。通知を受けた後は、そのまま予算の調整や支出の見直しができる画面に進めるため、気づいて終わりにならない工夫もされています。

自動で予算管理をしてくれるAI

ポイント

AIがこれまでの支出データをもとに予算を提案してくれるので、ユーザーは提案を承認するだけで管理を始められます。家計簿アプリでよくある「まず自分でカテゴリごとの予算額を決める」という最初の関門がなくなるため、何から手をつければいいかわからず挫折してしまう、ということが起きにくくなります。

RBC | NOMI Budgets

RBCはカナダ最大手の銀行です。同行のNOMI Budgetsは、AIを活用した予算管理機能で、AIがユーザーの過去の支出データを分析して、各カテゴリの予算を提案してくれます。ユーザーはその提案を承認するだけで設定が完了し、あとは設定した予算をどのくらい使ったかをAIが追いかけて、使いすぎが近づくと知らせてくれます。
これまでに約490万件もの予算設定に使われています。

BBVA | Financial Coach

BBVAはスペインの大手銀行です。同行のFinancial Coachは「診断→目標選択→個別プラン提示」という3段階の構成で家計改善をサポートする機能です。月次の収支・貯蓄・ローン返済額をAIが診断し、「月末をうまく乗り切る」「生活防衛資金をつくる」「別の目標に備える」という3つの目的を軸に、個別のプランを提示してくれます。
あれこれ考えなくても、診断に沿って進めるだけで自分に合った家計改善の道筋が見えるので、「そろそろ貯金を始めたいけれど、何からやればいいかわからない」という方に向いていそうです。

家計状況に合わせて自動で貯金をしてくれるAI

ポイント

AIがユーザーの収支パターンを分析し、余裕があると判断したタイミングで自動的に貯蓄に回してくれます。「勝手に残高を動かされるのは不安」という気持ちも生まれやすいところですが、今回紹介する事例では、その不安にうまく対処する工夫がされています。

RBC | NOMI Find & Save

カナダの大手銀行であるRBCのNOMI Find & Saveは、取引パターンを分析して余剰資金を自動的に積み立てる機能で、2017年の開始からこれまでに、累計96億カナダドル超が積み立てられてきました。AIが「今月はこのくらい余裕がある」と判断した分を、自動で貯蓄口座へ移してくれます。
残高が不足しそうになった場合は貯蓄口座から元の口座へ自動で資金を戻す仕組みもあり、貯めすぎて生活費が足りなくなる、といった事態にもしっかり配慮されています。

UOB | TMRW Auto-Save

UOBはシンガポールに本拠を置くアジア大手銀行で、インドネシアでは自行のデジタルバンクアプリ「TMRW」でAuto-Saveを提供しています。機械学習で支出・貯蓄パターンを分析し、余裕のあるタイミングで、貯蓄用の目的別口座へ少額を自動で移します。1回に積み立てる額はAIが判断しますが、その範囲は週最大3回・1回あたりRp25,000〜Rp250,000(日本円にしておよそ数百円〜2,000円台)に収まるよう設計されています。
なお、最低残高と月間の積立上限を自分で設定できるため、メイン口座の残高不足も防げます。また、積立のたびにプッシュ通知とメールが届くので、自分の知らないうちにお金が動く、という不安もありません。

まとめ

今回は、海外銀行の家計管理AI機能を紹介しました。8つの事例に共通していたのは、
「ユーザーが自分でやらなければいけないことを減らす」という考え方でした。
支出の分析、変化への気づき、貯金の実行といった、これまで人がやっていた作業を、AIがどこまで引き受けるか。その引き受け方を見ていくと、いくつか共通した工夫が見えてきます。

  • ユーザーが動かなくても、恩恵が届くように作られている
    通知も予算管理も積立も、ユーザーが「使おう」と思わなくても自然と役に立つようになっていました
  • 自動で動く機能ほど、止めたり戻したりできる仕組みがセットになっている
    AIが代わりに動くぶん、ユーザーがコントロールできる余地が用意されていました
  • 対象を絞っているものほど、生活になじみやすい
    家計全体ではなく特定の支出カテゴリやリスクに的を絞ることで、ユーザーにとっての意味がわかりやすくなっていました
  • 気づかせる工夫と、すぐ動ける導線は、別々に用意されている
    通知の中身だけでなく、通知のあとどこへ進めるかという導線まで含めて作り込まれていました

特に1つ目と2つ目に関しては、AIの発展に伴って実現しやすくなっていると思います。
今回紹介したサービスを含め、国内外の家計管理サービスが どのように発展していくのか、今後も注目していきたいと思いました。

HIKARINAでは、金融機関のWebサイトやアプリのUI/UX改善のご相談を多数承っています。
海外事例を踏まえた家計管理機能の設計や、既存アプリの体験改善にご関心があれば、ぜひお気軽にご相談ください。