競合サイト分析という分析手法は、自社の現在地を把握したり改善施策を検討することにおいて有効な分析手法のひとつです。
しかし、調査目的と調査手法があっていないと感じるケースをよく見かけます。また、ここ数年は、以前と比べてUI面の調査依頼が多くなっていますので、そちらも踏まえて、競合サイト分析をより有効な調査とするための考え方についてまとめてみたいと思います。

一般的な競合サイト分析のイメージ

これまでさまざまな競合サイト分析のご依頼をいただきましたが、ご依頼時のお客様のイメージとしては、ユーザビリティ面、機能面、コンテンツ面、プロモーション施策面などについて、予め定めた競合サイト数社と比較を行い、チェックリストに○×などで記載していく、といった調査をイメージされているケースが多くあります。

この場合のアウトプットは、自社は他社とくらべてコンテンツが充実している、ということや、競合のA社とB社には自社にはない機能がある、といったことが分かるドキュメントになります。
自社サイトと他社サイトを比べて機能や情報の有り無しを整理し、強み弱みのおおまかな傾向をつかみたいということであればこちらの手法で良いかと思います。

こちらは、主に大企業の経営陣など、自社サービスについて細かく把握されていない方に説明するためのレポートとしてご依頼いただくケースが多いです。

改善につなげていくための競合サイト分析

ただし、ご依頼時に目的を詳しくお聞きすると、上記のようなことに加えてWebサイトやサービスを改善する目的もある、という場合もあります。その場合は、上記のような調査だけでは改善にはつながりません。課題となり得る場所が大まかに分かるものであって、課題と言えるかどうかは分からないからです。

その場合は、いくつかの調査を加えます。
例えば、何らかの検索・申込サービスであれば、UI面の精緻な比較調査を加えます。調査のやり方は、ウォークスルー調査となりますが、ユーザーの実際の利用シーンを想定して利用し、競合サービスと比較・分析を行います。
比較する際は、単純にUIの差や見た目の差に着目するのではなく、その裏にある考え方や、その違いによって、ユーザーにどういった影響を与える可能性があるか、といったことも考えながら見ていきます。
また、個別の機能やコンテンツごとに、業界内外問わず、新しい考え方のものや、ベストプラクティスと考えられる事例と比較することで、新たな改善の方向性も探ります。

BtoBサイトなどコンテンツが重要なサイトでは、コンテンツ内容の比較も行います。伝え方などの表現や、書いてある内容がターゲットの問題解決につながるかどうか、といった視点で比較します。自社のコンテンツだけを見ていると良し悪しが分かりにくいですが、他社の類似のページと比較することによって、内容自体の違いや受ける印象の違いに気が付くことができるため、その点でも有効です。

ユーザーの視点を取り入れて比較分析すると有効

また、できるだけコストのかからないかたちで、簡易なユーザーリサーチを行い、競合分析に取り入れる方法も有効です。ユーザー視点をインプットした上で競合分析を行うやり方です。

ユーザーリサーチを競合分析に取り入れることは、以下のようなメリットがあります。

  • ターゲットユーザーの心理や行動、利用文脈をインプットすることで、新たな課題を発見できる可能性がある。
  • サイトの機能やコンテンツそのものの分析だけでなく、ユーザーにとってそれがどういった価値を持つものか、という視点が加わる。
  • 課題の重みづけのための参考情報となる。

競合サイト分析結果を改善施策に落とし込む際の注意点

競合サイト分析結果を改善施策につなげる際、他社の機能やサービスが優れているとしても、それをそのまま深く考えずに真似すること避けた方が良いでしょう。
サービスの特徴や、取扱商品数や商品性が違うこともありますし、全体の導線設計が違う場合もあります。こうした違いを考えずに単純に真似て搭載すると、改悪になってしまう可能性もあります。

また、特に、機能的なものについては、他社のものが単純に優れているし便利そうだな、といった程度の判断で真似してしまいがちですがこれも避けるべきでしょう。
その真似して搭載しようとする一見便利な機能が、実はまったく使われていない機能だったといったこともよく見かける光景です。

他社の良さそうなものを真似するために競合サイトを分析するのではなく、何らかの課題に対して他社がどう対応しようとしていて、それがとういった成果につながりそうか、といったことを細かく見た上で分析し、施策を検討していくことが重要だと思います。

まとめ

  • 競合サイトを分析する際には目的によってやり方を考える
  • 改善に向けた競合サイト分析であればいくつかの手法を組み合わせることで、改善施策が具体的にイメージできるかたちになることが望ましい
  • 改善施策の確度や精度をあげるためには、ユーザーテストを取り入れることも有効
  • 分析結果を的確に改善施策に落とし込むためには、他社のやり方を真似するのではなく、他社のある事象に対しての対応方法や考え方を自社にあてはめて考える