様々な分析を行い課題の整理も終わり、そしていざ課題に対して施策を検討しようという段階でズレが生じているケースは多いように感じます。
今回は、課題に対して改善施策がズレてしまう原因と、その対策について書いてみたいと思います。
課題に対しての施策がずれてしまいますと、分析作業も意味の無いものとなってしまい、その後の工程もすべて意味の無いものとなってしまいますので、十分注意する必要があります。

施策がズレてしまう原因

施策がずれてしまう原因はいくつか考えられます。
大きくは、課題に対し施策を考える段階というのは、分析側から制作側に作業が移っていくタイミングですが、その引き渡しの部分がうまく行かずに起きているケースが多いように思います。

特に以下のようなケースでは、特に引き渡しがうまくいきにくいと思います。

  • 課題定義が大まかで、改修箇所を特定しているのみ
  • 分析側が具体的な改善施策の方向性まで示せていない
  • 分析と施策の検討の段階に溝がある
  • 作る側が課題の背景を理解していない
  • 作る側が自分なりの方法で課題を解決しようとしはじめる
  • ずれていることに対して分析側が指摘できない。


コミュニケーションの仕方に起因する部分も大きいのですが、より実践的な部分では、課題の把握が具体的でなかったり、課題の発生原因の部分の考察が弱い場合にはずれが起きやすいということが言えると思います。
そもそも課題をとらえきれていなければ、本来の課題に対して改善施策がマッチする可能性は低いでしょう。

例えば、問い合わせフォームの入力ページの離脱率が高い場合、これをこの事実だけで課題化してしまい施策検討に入ってしまうと、単純に入力項目を減らしましょうとか、エラーの出し方を変えましょうという施策となってしまいます(もちろん、お作法レベルの事は達成しておくべきですが)。
もしくは、よくあるご質問ページへのリンクをはりましょう、といった、特に課題の本質とは関係のない、これまでの経験則的なアイデアに基づいた改修の方向性で話が展開しがちです。
当たり前ですが、課題設定が大まかであれば、施策も一般的というか的外れなものになる可能性が高くなります。

施策がズレないための方法① 課題について、要因も含め具体的に考える

こうしたことにならないためには、課題についてもう少し深く考えて、要因をつきとめることが重要です。
ユーザーはもしかすると、自分がしたかったことと、問い合わせページの趣旨があっていないように見えて、他のページを探したり、とりあえず分からないので、電話での問い合わせを検討しているのかもしれません。(電話が苦手なユーザーは他社に流れているのかもしれません。)
興味があって具体的な相談をしたいと思っても、問い合わせフォームが漠然としているため、うっすらとした興味だけで止まってしまい、他社に流れているのかもしれません。

要因をつきとめるためには、ユーザーテストやサイト内サーベイなどが有効でしょう。
お問い合わせフォームに訪れる際のユーザーの心理が見えてくれば、あとはサイトとのギャップを見ていけば良いわけです。
例えば、問い合わせではなくもう少し具体的なアクションを起こしたいと思うユーザーが多い、といったことが分かれば、そういったユーザー向けにフォームを改修すれば良いわけです。

上記はあくまでも例ですが、課題が具体的な場合とそうでない場合とでは大きな差がつきます。
差が分かりやすいように上記を整理すると次のような差となります。

○課題が漠然とした状態の例

問い合わせページの離脱率が高く、項目数が多いなどの理由で、入力途中で離脱している可能性が高い


○課題が具体的となっている例

数値的な根拠:
問い合わせページの離脱率が高い

行動観察結果:
問い合わせページ閲覧ユーザーは、入力項目の多さに辟易して離脱したり、入力途中で不明なことや決めかねることが出てきたために離脱しているわけではなく、ほんの一瞬見ただけで他のページに移ったり離脱したり他で何かを探そうとしている。

行動発生原因:
サービスに対する期待は高く、予約を目的として問い合わせページを閲覧したが、"問い合わせ"という文言しか表示されず、問い合わせ目的も選択できなかったため、自分の目的が達成できるかどうか不安となり、他社サイトへ流出してしまった

取りうる施策:
一般的な問い合わせページとの分離、もしくは、問い合わせ内容の例や問い合わせ目的の選択項目を追加するなどの対策が必要となる

前者のような漠然とした情報しかない場合は、制作側も、当然経験則や知識などを手掛かりに改善施策を検討するしかありませんので、ずれてしまうのもいたしかたないでしょう。
逆に後者のような情報があれば、状況に対して具体的な手を打てますので、ずれが起きる可能性は低くなります。

余談ですが、上記のように、分析結果を最終的に一枚のサマリーで、ダイジェストにしておくことは重要かと思います。
制作側も作業をしているうちに自分の考えが入りはじめて脱線していってしまうことがありますので、こうしたサマリーのようなサッと読み返しやすいものがあると、ずれはじめた考えを自分で矯正しやすくなります。

施策がズレないための方法② コミュニケーション部分での工夫

また、課題やその要因が具体的になっていても、ずれが発生してしまうケースはあります。伝える際のコミュニケーションに問題がある場合です。

こちらも、ヒューマンスキルの部分以外で即実践が可能なものもいくつかあります。
ひとつには、メールで資料を送るだけですとどうしても伝わりにくいとですので、必ず対面でMTGをすることが重要だと思います。
MTGの場で、分析側として制作側に伝える基本的な事項としては、課題や数値の状況と、その発生原因の分析結果、解決方法のいくつかの具体的方向性、の3つかと思いますが、これら3つを伝えた上で、難易度や範囲などについても議論をしながら施策内容について、その場で具体的に話ができれば大きくずれが起きる事はないでしょう。

具体的な施策のイメージが思いつかない場合でも、他社の事例を集めるなどして、こういったものは近い、違う、といった具体的な話ができれば、制作側から良いアイデアを得られる可能性もありますし、また、ずれが発生する確率も減ると思います。
(制作側としても、分析側から上記のような情報が不足している場合は、逆に確認すべきでしょう。情報が無いからと言って、自分の知識や経験則などをもとに判断してしまいますと、ずれが起きてしまう可能性が高くなります。)

また、MTGの最後に、制作側がどう解釈して、どういった対応をイメージしているかを確認することも良いでしょう。

そして、制作側からあがってきたアウトプットを早い段階で確認させてもらうことの約束をとりつけておくことも重要です。早い段階であれば、修正もしやすくなります。
もしも方向性がずれてしまってた場合は、課題に対し、達成できていることの評価と、達成できていないと考えられることとその理由を整然と提示し、あとは制作側にゆだねるのが良いかと思います。
このあたりから、人の部分の話が大きくなってしまいますので割愛しますが、具体的に実践しやすい方法としては上記のようなやり方があると思います。

まとめ

  • 課題に対して改善施策がずれないようにするために、課題の発生原因部分の考察を行い具体的にしたうえで、制作側に伝える
  • 制作側に課題を伝える際は対面でMTGし、課題の状況、発生原因、解決方法の方向性を伝えたうえで、お互いの認識について確認を行う
  • 改善施策案を早い段階で確認を行い、方向性がずれている場合は課題とズレていると考えられる部分と理由を提示する


改善につながってこそ、分析の意味がありますので、具体的な施策検討の部分からそれらが実際にかたちになる部分までを見ることは非常に大切なことかと思います。