Webサイトの改善サイクルをまわしていくためには、仮説の発見とその検証により課題を明確にしていくことが重要です。
以下のようなWebサイト改善サイクルの流れの中で言うと、(2)(3)の部分となります。

(1)前提条件(サイトの目的/ターゲット/KPI)の整理
 ↓
(2) 仮説発見型の分析による課題の検討
 ↓  ※売り上げが上がらないといった漠然とした状況で、課題がわからない場合、課題に見当をつける必要がある。
    すでに顕在化されている課題については3へ進む。
(3)仮説検証型の分析による課題の明確化および発生原因の特定
 ↓
(4)重要度の高い課題およびその発生原因を整理し、改善施策を検討する
 ↓
(5)改善施策のテストおよび実行
 ↓
(6)効果検証

(2)(3)の部分について、仮説を検証していくなかで新たな仮説が浮かび、また検証ということを繰り返すうちに課題がより具体的に見えてきますが、課題がはっきりと見えてくれば、次のステップである改善施策もより具体的になってきます。
逆に(2)(3)の部分の精度が低いとそれ以降のステップがすべてちぐはぐなものとなってしまいますので、この部分が改善サイクルの肝となるかと思います。
本記事では、ウォーターサーバー提供会社のWebサイト調査を行った際の例を用いてそれらを見て行きたいと思います。

調査のおおまかな流れ

ご依頼としては、ヒューリスティック分析のご依頼でしたが、申し込み獲得のための課題出しと改善施策の方向性を示してほしいというご依頼でしたのでヒューリスティック分析にこだわらずに実施させていただきました。

調査方法としては、クライアント様のほうで課題視している点と狙っている点などをお聞きした上で、簡易ユーザーテストを行い仮説にめぼしをつけてからGoogleアナリティクスによる解析や、競合サイトや比較サイトなどを見ながら検証し、課題を明確化していくかたちで進めていきました。
簡易ユーザーテストについては、社内に2人ほどウォーターサーバーを検討したことのある人間がいましたので、検討時や決定の際に考えたことなどを聞くことできました。

仮説を見つけていくための方法

仮説を見つけていくための方法としては、いくつかありますが、例えば以下のようなやり方があると考えられます。
こういった方法により仮説を探っていきます。

  • 本気で実際に購入するつもりで情報を調べていく(例えば、家族に相談をするなどしながら)
  • 競合サービスなどと比べながらサイトを見ていく(購入するつもりで)
  • 身内などへのヒアリング、簡易ユーザーテストの実施(ターゲットに近そうな人に)
  • 簡易ユーザーテストサービス(ユーザーテストExpressなど)の活用
  • 蓄積している定性的なデータ(お問い合わせなど)の活用
  • アクセスデータをセグメントごとに見てみる(主に目的達成ユーザーと、非達成ユーザーの行動の差異)
  • 簡易ユーザーテストサービス(ユーザーテストExpressなど)の活用


今回も、簡易ユーザーテストをする前に、個人的にウォーターサーバーの導入を検討する想定で、比較サイトやサービス提供会社のサイトをいくつか見ながら、導入に際し自分にとってのポイントはどのあたりなのかを考えながら見て行きました。

見えてきた仮説を検証していく

上記のように、少し自分なりに情報を入れた状態で簡易ユーザーテストを行いました。主に、導入時にどういった事を検討してサービスを決めていったのかを調査しましたが、調査をする中で導入検討のプロセスとしては以下のようなものであることが見えてきました。

1、そもそも必要なの?どんなサービスがあるの?ざっくり値段ってどうなの?
【ある程度、導入自体含めてふるいにかけてる状態】

2、各社の違いはどういった部分なのか?
【機能や細かな違いが少し見えている状態】

3、自分が必要とする機能はどれなのか?
【いろいろあるスペックの中で自分が重視するものはどれかを検討する】

4、最終的に、細かい部分で考慮するべきものはないの?
【気づいていなかったコストがないか、申込みの仕方、解約の仕方などを最終確認する】

上記のようなステップがあると仮定した場合、調査対象サイトは早い段階でふるい落とされてしまっているのではないか、という仮説の候補が浮かびましたので、こちらの仮説をもとにGoogleアナリティクスで訪問回数ごとのコンテンツの閲覧傾向などを見てみました。

仮説の候補の通り、1の段階から2の段階に進む率が低い状況が見られるのであれば、サービスの特徴が端的に伝わりにくい、もしくは、信頼性が欠けているといった事が考えられますし、また、2の段階から3に進む率が低い状況が見られるのであれば、細かな情報が不足している、もしくはトータル金額が分かりにくいために、他社と比較がしにくい状況となっており検討の候補から外れてしまっている、といった仮説の発見につながると考えられたためです。

Googleアナリティクスで数値を見たところ、まず、2回以上の訪問数が想像以上に少ないことが分かりました。2回以上の訪問が少ないことは多くのサイトでよくあることですし、多い少ないについては相対的に評価するべきですので一概には言えませんが、課題と言えるレベルの少なさでした。
他には、訪問回数が2回目3回目あたりのユーザーによく見られるページ(カテゴリ)があることなど、いくつかのことが見えてきましたが、今回はこの2点の仮説発見から課題化の流れを以下に書かせていただきます。

仮説の候補・仮説から課題化へ

まず、2回以上の訪問数が少ないことについてです。
サイトの目標達成に対しては基本的には複数回の訪問が必要となりますが、初回訪問から再訪問に至るユーザーが極めて少なく先ほどの2のステップの前で大半が離脱してしまっていますので、一般的には、特徴のわかりやすさや信頼性などの面で、他社との比較の中で検討から除外されてしまっている可能性があるということが言えます。

これらのことは、数値を見る前の仮説候補出しの段階で浮かんでいたこととも一致しました。
サイトの印象として他社と比べてぼやっとした印象があり情報が頭に入ってこないように感じられたのと、各スペックがあちこちに分散していたため、情報を調べることが億劫に感じられていました。
同様の意見は簡易テストでもあがっていましたので、数値での検証とあわせてひとつ仮説もしくは仮説の候補と言えるかと思います。

また、この点については、他社の状況も踏まえ具体的に説明できるレベルでしたので仮説としての確度としては低いものではありませんでしたが、広範囲に渡る大きな課題となり得ますので、この段階では仮説と言いきってしまって良いかどうかは難しいところです。
確度をあげるためには、オンラインユーザーテストなどにより検証を行いより具体化する必要がありますが、この仮説が課題として確定され改善できれば、改善幅は大きいと考えられますので、価値のある仮説の候補の発見と言えるかと思います。

次は、もうひとつの、訪問回数が2回目3回目あたりのユーザーによく見られるページ(カテゴリ)があることについてです。
これらの行動は、一般的には、導入検討プロセス(訪問回数の増加)に応じて異なるニーズがあり、それに合わせたコンテンツ提供が求められる中で2以降のステージにあるユーザーが、あるページ(カテゴリ)から特定の情報を取得しようとしている行動だと思われますが、それに対して適切なコンテンツを提供できておらず検討が止まってしまっている可能性もありましたのでその視点でデータを見ていきました。

2、3のステージのユーザーによく見られているコンテンツを、スペックなどの比較段階にあるユーザーの視点であらためて競合サイトのコンテンツと比較したところ、機能・サービスに関するある記載内容が競合にあることに気がつきました。しかし、調査対象サイトにはその記載はありませんでした。
そして、ここで仮説として浮かび上がったのは、競合と同じサービスがあるかどうかを調べようとしてよく見られていて、ただし、その記載が見つからないために比較対象から外されてしまっているのでは、という仮説でした。

こちらについては、実際は同等の機能・サービスがありましたので、Webサイト上の記載を見直すことによって改善が見込めるものでしたのと、改善施策がある程度明確でしたのでこれ以上の検証は行わず課題として確定し、改善施策の実施の方向で検討が進むことになりました。
ここで検討が止まってしまっていたユーザーもいた可能性も考えられますので、十分、改善効果としても期待できるものでした。

仮説発見から仮説検証を行い課題化へと進む中で、課題が明確となれば、改善施策も見えてくる

仮説発見から仮説検証を行い課題化へと進む過程について2件の例で見てきましたが、このような事をひとつひとつ行う中で、改善効果の高そうな、かつ明確な課題を見つけることができれば、サイト改善につながる可能性があります。
さらに原因なども含めて課題がはっきりと見えてくれば、改善施策も具体的になりますし効果検証もしやすくなります。また、万一、効果がでなかったとしても、多少、課題の発生原因のところに戻って施策を練り直せば改善効果は見えてくると思います。
逆に課題としてあいまいな状態で施策の実施まで進んでしまった場合、効果検証についてもちぐはぐなものとなってしまうのと、結果が出なかった場合に施策が間違っていたという以前に、課題のほうも疑わざるを得なくなってしまいます。
仮説をひとつひとつ検証しながら具体的な課題に落としていくところについては、できるだけ多くの事を考えて時間を割くべきところでしょう。

まとめ

  • 仮説を発見するためには、単にサイトを見るだけではなく、いろいろとやり方があるのでそういった方法で見ていく
  • 浮かんできた仮説を検証することで具体的な課題となっていく
  • 課題が原因なども含めて明確になれば、改善施策も見えてくる