Webサイトの改善活動において、課題を正しく把握し効果のあがる改善施策を検討、実施することが重要です。
そのためには様々な分析が必要となりますが、多くの企業では、アクセス解析で多少数字見ているといったケースが多いように感じます。
アクセス解析はWebサイトの行動データから課題を探ることができる有効な分析手法です。
一方で、アクセス解析の分析結果から数値的な課題は分かったが、それを改善するための施策として何が有効なのかが分からない、といった声もよく耳にします。
「分からない」と認識できているのなら良いですが、数値的な課題に対し、あてずっぽうの改修が行われているケースもよく目にします。
特定の箇所に数値的な課題があることが分かったとして、それがなぜそういった状況になっているかを分析せずに、やみくもに施策を打っても有効な成果が得られません。
アクセスデータから見えてくるのはあくまで、現状のサイトを利用した結果であり、その数値からは、数値の原因や、ユーザーにとっての理想などは読みにくいためです。

このように、アクセス解析も万能というわけではありませんので、不得手な部分は他の分析手法で補完する必要があります。
定量分析と定性分析を掛け合わせることが有効、などとも言われていますが、いくつかの分析手法の特徴を踏まえた上で、これらの手法を掛け合わせて分析することで確度の高い改善施策を導き出すことが可能となります。
以下、それぞれの分析手法の有効だと思われる点、そうでないと思われる点をまとめてみたいと思います。
(一般的な分析のやり方、考え方と異なる部分もあるかもしれませんが、その点を踏まえてご覧いただければと思います)

 

アクセス解析

Webサイトに訪れたユーザーの行動データを分析します。

有効な点:

  • おおまかなユーザーの動きが数値で把握できる
  • 問題のある箇所がある程度特定できる
  • 推移、変化を数値で見ることができる

また、以下のような見方をすることで良い仮説を得られることがあります。

  • ユーザーセグメント(流入、利用デバイス、訪問頻度、期間、CV有無等)ごとに行動データを分析
  • 流入データから、ユーザーが訪問した経路や、検索ワードの取得によりユーザーが期待することを分析
  • コンテンツをディレクトリや役割単位でグループ化して分析
  • なんらかの比較

考慮すべき点:

  • 数値の要因が分かりにくい場合がある
  • 分析結果から具体的な改善施策を導き出しにくいケースがある
  • 現状のサイトの状況に対しての数値であり、ユーザーの本来のニーズはつかみにくい
  • ユーザーにとっての理想や、向かうべきサイトの方向性などは見出しにくい

以下は分析手法自体の話ではないのですが、現場でよく見かける注意すべき点です。

  • 対象Webサイトや対象ユーザーに対する理解が浅い状態で数字を見てしまい、数字の解釈を誤ってしまう
  • ツールの設定がきちんとなされていなかったり、数字の前提をきちんと把握していない状態や、ノイズが入った状態で数字を見てしまい、間違った解釈をしてしまう
  • 数値の正確な定義が分からない状態で数字の解釈をしてしまい、間違った判断をしてしまう

 

ヒューリスティック分析

コンサルタントが、対象Webサイトを、コンサルタントの知見、経験則に基づき、デザイン、UI、文言などを評価する分析手法です。ユーザビリティの原則やWebサイトのトレンド、さまざまな改善業務の中で培った経験をもとに評価します。
また、特定のユーザー像を想定したウォークスルー調査や、セルフモニタリング的な(ヒューリスティックマークアップ)手法も用いて行います。
評価と書きましたが、課題化につなげるための仮説立案が目的です。課題の候補をコンサルタントが発見します。

有効な点:

  • ユーザビリティの原則などの視点で、UI、導線、表現面などの課題を発見できる
  • ユーザーテストやアクセス解析などでは抽出しにくい細かな課題が発見できる
  • ユーザー視点だけでなく、ビジネスゴールも踏まえた課題抽出や改善施策立案が可能

考慮すべき点:

  • あくまでもコンサルタントの経験則・知見による分析である
  • コンサルタントによっては一般的な原則やお作法的な知見に基づく表面的な分析に留まる場合もある。また、分析視点やアウトプットの具体性にバラツキがある
  • 戦略部分を得意とすするコンサルタントの場合、改善施策が一般的な施策立案であったり、目新しい施策立案となり、それを自社に当てはめる部分の話が薄いため、具体的な改善施策実行につながりにくい
  • Webサイトのデザイン・UXや技術的なトレンドを踏まえていない場合がある

 

競合サイト分析

コンサルタントが、対象Webサイトと競合のWebサイトについて、デザイン、フロー、UI、コンテンツ、コピーや文言といった、共通の評価軸で横断的に比較・分析します。
また競合Webサイトの良いと考えられる部分や、打ち出そうとしているもの、打ち出し方を分析することで、対象Webサイトの改善施策立案に役立てることも可能です。
競合Webサイト分析とは多少離れますが、異業種を含めWebサイトの優れた事例の調査、分析も有効です。

有効な点:

  • 対象Webサイトの分析の場合、そのWebサイトの枠を超えた課題は見つけにくいが、競合Webサイト分析により、違った仮説が見えてくる
  • 競合会社Webサイトの状況や、分析の仕方によっては、自社の課題や、改善施策の方向性が具体的に見えてくる
  • 競合会社が類似の課題に対し、何を考えどう取り組んでいるのかという情報をもとに自分たちの打ち手の検討ができる

 
考慮すべき点:

  • 比較・分析した評価は、あくまでもユーザーの評価とは必ずしも合致しない
  • コンサルタントによっては単純な比較(あるなし、条件達成未達成)の調査のこともあり、その場合、良し悪しの判断がつきにくく、優先度が分からないため的確な施策立案につながらないことがある

 

リモートユーザーテスト(オンラインユーザーテスト)

調査目的にあった属性のユーザーにWEBサイトを利用してもらい、利用時の行動を観察するとともに、その行動の理由や心の動きなどを聞き出します。データからはわからないユーザー心理や思考を読み解けます。

ユーザーには自宅でWebサイトを利用してもらい、その様子を観察・分析することで、行動の裏にあるユーザー心理を把握できます。
あらかじめ用意されたタスクに沿ってサイトを利用しながら、思ったことを適宜話してもらいます。

有効な点:

  • 提供側とユーザー側の認識のズレから発生するボトルネックが発見しやすい
  • スピーディにテストが実施できる(特にポップインサイト社のユーザーテストExpressは、ほぼ自動的にテストが実施できるため、予備調査としても使い勝手が良い)

考慮すべき点:

  • テスト環境はあくまでもバーチャルであり、実際の利用シーンではないため、実際のところは分からない
  • 被験者(モニター)によっては、表層的な意見しか得られないケースがある
  • サイトの性質やサービスとしての成熟度などによっては、有効な回答が得られないケースがある
  • サービス全般として、被験者(モニター)を選ぶ部分(リクルーティング、スクリーニング)が弱い

 

対面ユーザーテスト、ユーザビリティテスト

対象サイトのユーザー、もしくは対象サイトの属性にあった方にお越しいただき、対面での調査を行います。モデレーターからの指示に応じてサイトを利用する様子(行動)を観察するとともに、その行動の理由や心の動きなどを探ります。
検証したいタスクをあらかじめ具体的に設定しその作業を行ってもらうタスク型の調査や、普段使っているような感覚でサイトを利用していただきつつ、ユーザーの心理を探り、会話をしながら、課題を抽出していくデプスインタビュー型のテストがあります。
両方を同時に行うこともできますので、行動を観察する部分と、意見を伺う部分をうまく使い分けることで有効な発見が得られやすくなります。


有効な点:

  • ターゲットとするユーザー、もしくはリアルなユーザーに、普段どのようにWebサイトを利用していて、どう感じているかを確認することができる
  • ユーザーの行動・発言に応じて、適宜質問を追加できる(深堀りできる)
  • 対面テストの被験者(モニター)は、リアルな対面が伴うこともあるせいか、責任感の強い方が多い傾向があり、有効な成果が得られやすい

考慮すべき点:

  • テスト環境はあくまでもバーチャルであり、実際の利用ではないため、テストでの発言、行動が、日常のそれとは異なる可能性がある
  • 対面ということもあり、良い回答をしよう、というエネルギーが働きやすい
  • 調査が大掛かりなものとして認識されており、気軽に実施しにくい

また、調査結果の活用方法についても、ユーザーの発言を鵜呑みにしてそのままかたちにしても成果が得られないケースもあります。発言の文脈やWebサイトの状況などを踏まえて解釈することが必要です。

 

各分析手法の補完の例

このように、各調査手法には、良い点、不得手な点がありますので、それを他の調査手法で補完することが重要です。
以下に補完の例をあげさせていただきます。


アクセス解析を補完する他の分析手法:

  • ユーザーテストと組み合わせることで、ユーザー心理をもとにした、課題特定、原因追究が可能となる
  • ヒューリスティック分析と組み合わせることで、課題と想定される点の深堀が可能となる

ヒューリスティック分析を補完する他の分析手法:

  • アクセス解析と組み合わせることで、ヒューリスティック分析で抽出した課題を裏付けることが可能となる
  • コンサルタントが不得手なジャンルやターゲット層が違う場合、ユーザーテストを先に実施しインプットを得ることが有効
  • 競合サイト分析と組み合わせることで、改善施策の立案に役立てることが可能となる

競合サイト分析を補完する他の分析手法:

  • ユーザーテストを先に実施しインプットを得ることが有効

ユーザーテストを補完する他の分析手法:

  • 先にヒューリスティック分析や競合サイト分析を行い、サイト深く理解し、仮説を持った上でテストを設計することが有効

 

まとめ

各分析手法にはさまざまな特徴がありますので、それを踏まえた上で実施し、足りない部分は他の分析手法で補い、立体的に分析結果を評価することで課題も明確となり、成果が得られやすくなります。また、簡易なかたちで良いので、小刻みに各種の分析手法で分析し循環させていくことが、成果の上がる改善施策にもつながると思います。